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キャビンアテンダント(CA)就職事情 2005年
採用人数
2004年は、バブル崩壊後、久しぶりにキャビンアテンダント(スチュワーデス)採用が多い年だった。ところが、2005年は、国内景気の確実な回復が追い風となり、さらに多くの新人キャビンアテンダントが誕生した。その数は日系・外資系航空会社合わせて1500名(推計)近くとなった。一年間で、キャビンアテンダント採用試験が、各社合計で、延べ44回も実施されたのだ。その内訳は、国内系航空会社24回、外資系航空会社20回となっている。さらに、元スチュワーデスのみを募集するケースも12回あった。
ANA拡大基調
2005年のトピックスのひとつは、営業利益860億円、経常利益640億円になり、経営が拡大基調にあるANAの大量採用である。前年250名採用に対し、2005年は530名と倍増した。さらに、2006年は850名ものキャビンアテンダントを採用する予定なのだ。採用数が多くなれば、多くの若い人たちにチャンスを与えることになる。2006年文系新卒者の就職ランキングトップとなった。若い女性たちのANA人気はしばらく続きそうだ。当塾でも、ANAを第1志望とする会員が増えている。
さらに、人気の拍車をかけたのは、採用年齢の緩和である。従来のキャビンアテンダント採用では、新卒・既卒とも、年齢上限の目安は25才前後であった。ところが、2006年の既卒採用では、それを30才に引き上げたのだ(新卒者は従来どおり)。大量の人員を確保するには、応募可能者を増やす必要があったようだ。そのため、年齢のことで、応募をあきらめていた20代後半の人たちが、息を吹き返したのだ。ANAは、「20代後半の私たちにチャンスを与えてくれた会社」となった。20代後半の女性たちの中には、大学卒業時、採用試験がなく、泣く泣くあきらめた人たちがいる。さらに、従来は、短大・大卒のみしか応募ができなかったが、2006年の採用では、専門学校卒まで応募できるようになった。これで、20代すべての女性の目をANAに向けさせることになった。キャビンアテンダント採用も、営業戦略の一環として行なわれているような印象さえある。
2社統合途中のJAL
一方、JALは在籍邦人キャビンアテンダント約6000名のところに、旧JASとの経営統合で、JAS出身の客室乗務員をあらたに2000名抱えた。国際線中心のJALキャビンアテンダントと国内線専門だった旧JASキャビンアテンダントをどのように統合していくかが課題となっている。両社で重複していた国内路線の統廃合もあり、キャビンアテンダントの人員は足りているとみてよい。そのため、採用数は、退職に伴う補充程度の人数となっている。JALグループは、コスト削減が急務となっている。したがって、JAL本体が持っている路線を、国内線ではJALエクスプレスに、国際線ではJALウェイズに、さらに移譲していくようだ。昔からいるJAL国際線キャビンアテンダントたちは、ハワイ、オーストラリア、タイ、フィリピン、インドネシアなどが飛べなくなってしまったと言っている。これらの路線は、すべてJALウェイズのキャビンアテンダントたちが乗務している。一部のJALキャビンアテンダントは、JALウェイズに出向してこれら路線を飛んでいる。国内線では、さらに人件費を含めたコストが安いJALエクスプレスに路線を移譲していくようだ。キャビンアテンダント200名の現体制を1000名体制にすべく準備を進めている。したがって、JAL本体では、人件費が高いベテランCAに対して、早期退職制度を勧めたりして、人員削減努力をしているようだ。
ANAでは、3年以上前に、勤務条件の改定が行なわれた。以前、ロスアンジェルス便乗務では、ロスアンジェルスで2泊滞在することができた。それが、1泊になった。従来、宿泊便乗務では、一部タクシー利用が認められていたが、公共交通機関利用のみになったり、月間最大乗務時間が90時間以上に引き上げられたりした。日本のキャビンアテンダントの世界では、月間80時間以上の乗務は、体力的にかなりハードというのが定説となっていた。当時、経営的にかなりきびしいところまで追い詰められていたANAは、全社一丸となって、それを乗り越えることを最優先したようだ。そして、息を吹き返したのが現在のANAである。
一方、JAL側は、JASとの経営統合などがあり、経営改革が遅れている。スチュワーデス部門でも、今年後半には、勤務条件がANA並みになるため、体力に自信がない人たちや、仕事と家庭の両立を図ってきた人たちは、乗務を続けるかどうか決断を迫られている。
応募倍率
応募倍率は、採用段階のどの時点で捉えるかによって違ってくる。最近は、インターネットによるエントリーが主流になっている。エントリーした人数と、採用面接に来る人数は違ってくる。エントリーしたものの、前日や当日になって、気後れしてしまい、面接に参加しなかったという声をよく聞く。今年(2006年)の新卒採用では、ANAへは9000〜10000名、JALへは6000〜7000名のエントリーがあったようだ。実際に面接に参加するのは、これらの数字から1000名くらい少なくなる。ANAへの応募者が多いのは、募集人数が多いこと、ANA人気が高まっていることが挙げられるが、実情は、今年の採用では、専門学校生が応募できるようになり、その分が増えたと見るべきである。ただし、応募倍率については、面接官経験がある者からすると、何の意味ももたない。なぜなら、キャビンアテンダントのイメージとはかけ離れていたり、語学や教養などの準備が十分でない人たちの応募も多いからである。
ANA採用拡大の影響
ANAの積極的な採用は、航空他社にも影響を及ぼすことになる。ANAは新卒のみならず、既卒者の採用も行なっている。ANAが求めている人材であれば、すでに他社で乗務しているキャビンアテンダントをも採用するようになった。そのため、国内線専門の中堅航空会社や外資系航空会社から、多くの現役たちが応募している。2006年はじめの既卒募集の際、キャビンアテンダント総数250名前後のある中堅航空会社では、その1割近くが、ANAに移籍してしまった。そのため、新たに、キャビンアテンダント採用をせざるを得なくなっている。ANAが採用募集を始めると、グランドホステス(地上スタッフ)を抱える会社も戦々恐々となる。グランドホステスになっている若い女性たちも、キャビンアテンダント予備軍であるため、やはり、欠員が発生してしまう。
JAL、ANAでは、入社すると、当初は、羽田基地勤務になる。入社した新人スチュワーデスは、訓練が羽田で行なわれることもあり、地方出身者は大森、蒲田など京浜急行沿線に住居を構えることが多い。さらに、エアードゥやスカイマークのスチュワーデスも羽田基地所属の人たちもいる。大量のスチュワーデスが京浜急行沿線に住居を求めた結果、マンション・アパートの需給が逼迫してきていて、給料に見合った家賃の部屋を探すのが難しくなっている。
採用方針の変化
従来、JAL、ANAのような大手航空会社は、他社で乗務していたキャビンアテンダントは、他社の色で染まってしまっていると考え、採用を控えるようなところがあった。ANAの例に見るように、最近は、柔軟な発想に切り替えてきている。JALウェイズ社なども、国内他社からの移籍組が在籍している。また、OGスチュワーデスを活用している同社では、元ANA、元外資系航空会社など、出身航空会社にこだわらずに採用している。10年前には、JAL系の航空会社がANA出身者を採用することはなかった。ANAキャビンアテンダントの職場で、JALウェイズへの移籍が話題に上ることもある。
6年契約制
2006年のANA客室乗務員採用説明会では、「6年契約制キャビンアテンダント」についての説明があった。6年間だけ乗務をするキャビンアテンダントである。これで、従来からある、契約期間3年を終わると正社員になるコースと、契約キャビンアテンダントとして6年間乗務するコースと、2つの雇用形態となる。正社員コースでは、契約社員の間は、1年毎の契約更新を2回行ない、4年目から正社員となる。6年契約コースでは、1回の契約期間が3年となる。そして、更新は1回のみとなり、6年後には雇い止めになる。なお、ANAでは、契約スチュワーデスのことを、「スカイサービスアテンダント」の呼称を使っている。
6年契約制は、ANA本体で導入する前に、ANAグループの国内専門航空会社エアーニッポン(ANK)で、その試みが行なわれている。ANKでは、2004年6月の募集要領から、6年契約についての記載がされている。すなわち、最初の契約期間3年の間に、先任資格を保持した者のみ契約更新が行なわれることになった。さらに、長期雇用へは、会社が必要性を認めた者のみしか移行できなくなった。したがって、基幹要員として後進の育成や管理を行なう人員のみが長期社員として残ることになる。
ANAの新雇用制度では、新卒者は無期限雇用、既卒者が有期限雇用になるのか、別の選考方法を用いるのか、また、6年契約キャビンアテンダントは国際線を乗務できるのかなど、現時点では、詳細は不明である。
外資航空会社
外資系航空会社も、景気低迷の影響を受けきびしい経営を強いられてきた。しかし、昨年のキャビンアテンダント採用回数を見ても分かるように、人員確保の動きが出てきている。中近東系や一部アジア系航空会社が元気である。反面、米国系、ヨーロッパ系航空会社は、まだ力強さが出てきていない。
米国系
ニューヨークテロ事件後、大手航空会社はきびしい経営を強いられてきた。企業倒産を免れるべく必死であった。そのため、人員削減も行なわれた。多くのキャビンアテンダントがレイオフされてきた。日本路線では、日本人CAを搭乗させたいところであるが、本国人CAをレイオフしている状況で、日本人CAを乗務させにくい。しかし、日本便では、日本人旅客のために日本語が通じるようにしておきたい。苦肉の策として、アメリカで労働許可を持っている日本人や日系人の採用を行なってきた。また、すでに働いている日本人CAたちは、米国−日本間のフライトでは、客室乗務員としての肩書きで乗務させにくいため、ノースウェスト航空のように、機内通訳として乗務させている。日本以遠、たとえば、日本−香港、シンガポール間のように、本国労働組合の影響がないところでは、客室乗務員の肩書きで乗務させている。また、ユナイテッド航空のように、生活費が高い日本に基地を置くことを避け、シンガポール基地で日本人CAを採用するところもある。
アジア系・オセアニア系
アジア系では、シンガポール航空人気に変わりがない。シンガポール航空をめざす志願者も多い。アシアナ航空、エバー航空のような韓国、台湾の第2の航空会社が路線を拡大しつつある。一方、大津波の影響で旅客減に見舞われたタイ航空や、経営改革が遅れがちなマレーシア航空は、きびしい経営を強いられている。そのため、日本人CAの採用募集が出てこない。ここにきて、中国系の航空会社、中国国際航空、中国南方航空、中国東方航空が日本人CAを採用している。鳥インフルエンザやSARSの影響をまともに受けたキャセイ航空も、中国本土路線を増やしたりして元気が出てきている。
オセアニア地区では、どの航空会社も経営がきびしい。そのため、人件費を含めコストを抑えた子会社づくりをしている。オーストラリアの航空会社は、アメリカと同様に、本国人CAの雇用を守るため、日本での採用を中止している。オーストラリアでの労働許可を持っている場合のみ応募が可能である。
ヨーロッパ系
ほとんどの航空会社が、欠員補充のための採用となっている。したがって募集は年1回あるかどうかである。日本人を正社員として採用しているドイツ航空やエールフランスでは雇用が安定しているため、欠員補充もあまりない。アリタリア航空は経営破たんに近いため、日本人CAを採用する余裕がないようだ。英国のヴァージンアトランティック航空は、ときどき日本人CAの採用を行なっている。KLMは、雇用契約期間が終わると、雇用関係を解消し、新たな人員を採用するシステムをとっている。EU統合の結果、エアーフランスとKLMの統合に見られるように、各国がそれぞれナショナルフラッグキャリアーを持つ必要性が薄れてきている。
中近東系
一番元気なのが、中近東系の航空会社である。エミレーツ航空や2005年から日本乗り入れを開始したカタール航空は、旅客増に伴い、路線拡大を図っている。また、これら2社では、日本人CAも、日本路線のみならず、ヨーロッパや他のアジア諸国、アフリカへも飛んでいく。一般的に、外資系航空会社で働く日本人CAには、昇格のチャンスはほとんどないと言ってよい。しかし、エミレーツ、カタールの2社では、国籍に関係なく、昇進のチャンスも与えている。ただし、イスラム教の国であること、砂漠の国であることなどから、3年も住めば十分となる。トルコ航空は、日本の人材派遣会社に、客室乗務員の派遣を委託している。現時点では、乗務経験者のみの採用となっている。
外資航空会社と学歴
多くの外資航空会社は、日本人CAの基地を本国においている。外資系航空会社に入社すると、外国での1人暮らしが待っている。そのため、異文化社会で生活できることが採用の条件となる。航空会社によっては、応募時に、外国での生活体験の有無を聞くこともある。また、本国人CAたちに交じって仕事をすることも容易ではない。契約思想が強い外国社会では、自分のミスを認めなかったり、責任を転嫁されたりする。
アジア諸国では、本国人CAたちは、良家の子女だったり、エリート大学出身だったりする航空会社もある。本国人CAとのバランスを勘案して採用することもある。
ヨーロッパ系航空会社では、自立した人、自分の行動に責任がとれる人かどうか観察している。したがって、他社での乗務経験があったり、社会経験があったりするような人を好むところがある。採用基準が「高卒以上」となっていても、高校を出たばかりの人を採用することはない。いきおい、新卒者の場合は、年齢的に大人と見られる大卒の人が多くなる。
数年前より、法律で、シンガポールで働く外国人は、大学を出ていなければならないことになった。シンガポール航空は、日本人CAの基地がシンガポールにあるため、採用基準を大卒以上としている。ヨーロッパでは、別の理由で、KLMが大卒以上の採用としている。ユナイテッド航空が、久しぶりに日本人CAを募集したが、所属基地がシンガポールになるため、大卒以上の者しか受験できなくなった。 2006.07記
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