苦情旅客対応講座
はじめに  苦情処理の心構え編  In-chargeとしての基本対応  具体的処理例
具体的苦情例
接客の3悪 = 忘れ 間違い 遅い

 上の3つは、サービス業に従事する人が、注意しなくてはならない基本的なことです。皆さんが、お客としてレストランなどを利用したときにも、これらのミスをされると、そのレストランに対して、あまりよい印象をもたないと思います。

注文忘れ

 お客としてレストランを利用したとき、一番気分を害するのが注文忘れです。友人たちのところには、すでに料理がきているのに、自分のだけがいつまでたっても来ない。友人たちも本人も落ち着かなくなり、会話もままならなくなります。これがお見合いの席のように、もっと重要な食事会であれば、その場の雰囲気を壊してしまうことになります。
 機内では、飲物のスキップや食事の出し忘れも、注文忘れと同じです。お客様の心理は、自分だけが差別され不当に扱われたと思い込みます。
食事サービス中やアイドルタイムに、
  「お水が欲しい」
  「バンドエイドが欲しい」
  「タイムテーブルを見たい」
などのランダムリクエストもあります。とくに、他のことに気を取られているときに、リクエストを受けると、忘れてしまうことがあります。注文忘れを防止するには、メモの活用があります。また、サービスの節目ごとに、振り返りを行い、忘れていることがないか確認することが大切です。メモをとっておけば、注文忘れのチェックを確実にできます。


お客様は待っている

 国内線に私用で搭乗したときの話です。担当していたスチュワーデスは、まだ、新人のようで一生懸命サービスをしていました。微笑みがあり、積極的にお客様にアプローチしていました。離陸して飲物サービスが始まりました。どこで引っ掻いたのか、指に血がにじんで痛くてしょうがないので、そのスチュワーデスに、
 「あとで、けっこうですけど、バンドエイドをもらえませんか」
彼女は、明るい声で、
 「かしこまりました。あとでお持ちします」
と言ってくれました。
 お客様への飲物サービスが、ひと通り終わった様子なので、バンドエイドをそろそろ持ってきてくれるかな、と待っていました。見まわすと、彼女は、一生懸命機内販売の仕事をしています。それが終った後も、彼女は休むことなく客室に出ていました。一生懸命働いています。何度となく、私のそばを通り過ぎました。彼女にアイコンタクトしてみました。残念ながら思い出してくれる様子はありませんでした。そして、バンドエイドは届きませんでした。
 彼女は、一生懸命仕事をしていたのですが、サービスマンとしては、次第点をあげることはできませんでした。


お客様は忘れない
 もうひとつ知っておいて欲しいことがあります。サービス側は忘れても、お客様は忘れないという点です。そして、ずっと待っています。さらに、注文した物が届くまで、落ち着かない状態のままでいます。その後、次の行動に移ります。
* 再度注文する。
  * 「今日のスチュワーデスはナニをやってんだ!」と思い始める。
  * じっと待っている。
に分かれます。サービス側の状況などを理解し、注文忘れに寛容な人は、再度注文をしてくれるかもしれません。しかし、ほとんどのお客様は、別の行動をとります。「今日のスチュワーデスは・・・」と思い始めたお客様は、胸にどんどん溜め込んでいきます。それでもしばらくは待っています。そして、それに絶えきれずに爆発させます。「じっと待っている人・・」は、爆発するようなことはしませんが、スチュワーデスに無視されたと感じ、寂しい思いでいます。これがお客様の心理です。

注文間違い

 洋食を注文していたのに、和食をサービスされてしまった。ステーキを頼んだのに、Fishを持ってきた。税関申告書を頼んだのに、入国カードを持ってきた。注文したものと違うものをサービスされるのも、気分が悪いものです。間違いや忘れをされると、お客様は、
 「自分はいい加減に扱われている」
と感じます。そして、再度、同じミスを犯せば、そのスチュワーデスに対する信頼感はまったくなくなります。


ABCDのランクづけ

 商社に勤めている友人がいます。彼は、仕事柄、世界中を飛び回っているので、飛行機によく乗ります。その彼が、搭乗してすぐにあることをします。それは、旅客搭乗中に、スチュワーデスがどのように振舞っているか、表情はどうか観察します。そして、彼がいる客室を担当するスチュワーデスを、1人ずつABCDとランクづけするそうです。飛行中、何か用事があるときは、できるだけAとBにランクづけしたスチュワーデスに頼むと話していました。
 なぜなら、彼の経験では、CとDのスチュワーデスにものを頼むと、忘れられたり、嫌な顔をされたりすることが多く、機内でくつろげなくなるからだそうです。


頼みやすいスチュワーデス

 「なんで私ばかり頼まれるの!」
などと思わないでください。お客様が、あなたにばかり用事を頼むのは、あなたが、感じのよい接客をしているからです。前述の商社マンに限らず、どのお客様も、無意識のうちに、感じのよいスチュワーデスに頼んでいます。 用事を頼まれる回数の多さは、あなたに対する信頼の高さを表わしています。


遅 い

 ファーストフード店では、注文を受けてから提供するまで、3分以内を目標にしています。マクドナルドでは、それをさらに縮める努力をしています。また、世の中、コンピュータ化時代になり、情報もすばやく手に入れることができます。このような環境で育った世代が、お客様の主流になりつつあります。
 機内でランダムリクエストを受けたときは、すぐに提供してください。お水を頼まれて、提供するまでに5分もかかっては、お客様は待たされたと感じます。
 お客様の依頼をすぐにできないこともあります。どうしても時間がかかってしまう場合は、かならずその旨伝えます。
 FRクラスでは、Entreeは、隣のお客様とできるだけ同じタイミングでサービスすることになっています。ときには、Galley側の都合で、遅れることがあります。その際にも、お客様に、あとどのくらいで提供できるかを知らせておくとよいです。お客様は、自分の食事が忘れられていないことを分かり安心できます。


座席移動

 家族連れ、新婚カップルなどがバラバラにアサインされている時など、座席アレンジメントを依頼されることがあります。また、病人発生の時にも、隣席のお客様に移動してもらって、横になれるように配慮したりします。ところが、後刻、移動を依頼された旅客から、往々にして苦情が来ることがあります。
 「無理やり移動させられた」
 「協力したのに何のFollow Upもなかった」
 「その席を予約して座っているのに、移動させられた」
というものです。お客様の中には、事前予約で席を確保して座っている方も増えています。また、
 「なぜ、俺(私)が移らなければならないのか」
という心理も働きます。それでも、スチュワーデスから依頼された以上、回りの目もあり、断ることができない立場に置かれます。
 困っているお客様のために、座席アレンジをしたのに、一方のお客様が不満を持ってしまうのでは、せっかくの努力も泡となってしまいます。協力してくれたお客様へのFollow Upをしっかりしておかないと、不満を持ったまま降機していくことになります。


UAでの体験

 一昔前の話ですが、休暇をとり、幼稚園と小学1年の子供を連れて、アメリカのデズニ−ランドに行ったことがあります。その帰りに、ホノルルに寄るために、UAを利用しました。そのFLTは満席近かったので、EF利用の私たち家族は、カウンターClose寸前まで待たされ、最後にようやく搭乗することができました。座席はD Comp'tでした。子供が小さかったので親子一緒に座れたらよかったのですが、そうもいかず、席はバラバラでした。それぞれの席に子供たちを座らせベルトを締めさせ、自分たちも着席しました。ところが、D Comp't前方に立っていたややベテランのスチュワーデスが、みんなに聞こえるように、

  「実は、座席がバラバラの家族がいます。一緒に座ることができるようにして

   あげたいと思うのですが、どなたか協力してくれる方はいませんか?」    と頼んでくれました。そうすると、何人かの旅客が手を上げてくれました。そのスチュワーデスのお陰で、小さな子供たちと離れ離れにならず、ホノルルまで行くことができました。そのスチュワーデスのすばらしい処理に感動したことを、今でも覚えてします。


病人対応

 重病になったお客様へは、誰でも、それ相応の対応をします。気をつけなければならないのは、風邪ぎみだとか、胃腸の調子がわるいとかの場合です。旅行中、体調が悪くなると、誰しも不安になります。しかし、軽い気持ちで対応しないでください。
 あるヨーロッパ帰りのFLTに、パックツアーの母娘が搭乗してきました。娘さんは旅行中に風邪を引き、微熱がありました。母親は、娘(20代)さんが食欲もなく、あまり気分が悪そうなので、スチュワーデスに、
 「どこか、娘を横にさせられる場所がないですか」
と訊ねました。そのスチュワーデスは、心の中で、
 「さんざん買い物して疲れて調子が悪いからって、横になる場所なんかないわ」
と、お客様がDemandableな要求をしていると、勝手に決めつけてしまいました。後輩たちには、
 「あのお客様はDemandableだからほっといていいのよ」
と指示したため、後輩たちは何もしてあげられませんでした。お客様は、再度、なんとかならないかお願いにきましたが、つれなく断ってしまいました。一緒に旅行していた他の人が、あまりにも扱いがひどいと、強い態度で抗議したため、最終的には、SUがFR Seatを提供することにしました。それまで、SUもそのスチュワーデスからDemandableな旅客がいるとの報告を真に受けて、自分自身の目で確かめることもしていませんでした。
 その娘さんは、KIXに到着するなり、病院に担ぎ込まれ、検査の結果、肺炎がひどく、手遅れになるところでした。後日、家族から会社に対して、強い抗議が寄せられました。
 私たちは、医者ではありません。勝手な判断や思いこみは慎まなければなりません。あくまでも、お客様の症状にもとづいて、できるだけの対応してあげることが大切です。たとえ風邪ぎみであろうと、体調の悪い人は弱者ですので、あたたかい気持ちで対応して欲しいところです。


寝ていてスキップ

 到着前の2nd mealサービス時、判断に迷うのは、まだ寝ているお客様への対応です。よくあるのは、オシボリや食事をスキップされたと言って、お客様がむくれてしまい、どうにも手がつけられなくなるケースです。
 このトラブルは、旅慣れていないお客様の場合に起きます。旅慣れている旅客や欧米人旅客の場合は、寝ているのを起こす必要はないでしょう。
 個人客は、自由に行動できますので、到着前の機内で食事がとれなくても、お腹がすけば、どこかで食事することもできます。一方、団体客は旅程が決まっていますので、そうはいきません。到着前に腹ごしらえをしておかないと、次の食事にありつけるまで空腹のままでいなくてはなりません。
 さらに、日本人の団体客は、皆と同じように扱われることを期待しています。皆が起きて食事をしているなら、自分も起きて食事をする。これが日本人の心理です。それなのに、皆は起きて食事しているのに、自分は起こされなかったし、オシボリや食事をスキップされたと思いむくれます。
 このようなお客様の場合は、オシボリや食事を提供する際、ちょっと声をかけます。それでも起きない場合は、隣の連れのお客様に、
 「まだお休みのようなので、食事サービスをひかえさせていただきます。もし起き

  られましたら、教えていただけますか、いつでもお食事をお持ちしたいと思い

  ます」

この言葉がけがあれば、トラブルにはなりません。回りのお客様に、サービス側の「情」を伝えておくことが大切です。


衣服汚損

 お客様の衣服を汚損してしまった場合の対応についても多くの苦情が寄せられます。
サービス側のミスで衣服を汚してしまった場合は、なによりもまず、誠意をもって、衣服についた汚れを取り除く努力をしなければなりません。飲物による汚損は、多くの場合、Soda Waterが有効だということは知っていると思います。赤ワインをこぼして汚損してしまった場合は、白ワインで汚れを落とすというのもあります。熱い飲物をこぼしてしまった場合は、衣服の汚損だけでなく、ヤケドの対応もしなければなりません。
 衣服にシミができそうなものをこぼした場合は、皆さんも一生懸命汚れを取り除こうすると思います。気をつけなければならないのは、白ものの飲物の場合です。シミの心配はないなどと軽く考えて対応すると、あとでシッペ返しがきます。白ものでも衣服を汚損したことに違いはありません。オシボリなどで十分拭きとってください。白ものでも糖分が含まれていれば、あとで残ります。
 お客様の服装によって対応を変えることがないようにします。あるFLTで、ジーンズ姿の若いお客様に飲物をこぼしてしまいました。それほど汚れが目立たないようだったので、簡単に拭き取りました。やや軽い対応をしたところ、周囲のお客様から、相手によって対応が違うのではないかと苦情がきたことがあります。どのような服装でも、こぼしたことには変わりありませんので、誠意を持って対応することが大切です。


クリーニングクーポン

 機内で、きるだけの処理をした後に、はじめてクリーニングクーポンが出てきます。クリーニングしてもシミが残ってしまった場合は、会社の方に連絡していただくよう案内します。状況によっては、SIMを発行し、到着地KIとサービス推進部に報告し、その後のFollowをお願いします。


こぼさない努力

  ビール、コーラなど炭酸系の飲物を、客席で開けるときは開け口を手やキッチンタオルで覆う、という基本をかならず守ってください。また、飲物をServing Trayをつかって、お客様の目の前に差し出すとき、お客様の動きをよく見ていてください。もうお客様は手にとっただろうと、Trayを引くと、まだしっかり持っていなくて、カップを落としてしまうこともあります。また、別のお客様が振り向きざまにTrayにぶつかり飲物をこぼすこともあります。特に、子供は予測がつかない動きをしますので注意してください。


お客様同士の場合

 お客様同士でこぼして衣服を汚損したのに、スチュワーデスの対応が悪かったというコメントがくることがあります。この場合は、お客様同士の問題ですので、衣服汚損について、基本的に、航空会社は補償の責任をとることはしません。しかしながら、こぼした側もこぼされた側も、お客様は困っています。困っているお客様を助けるのはスチュワーデスの仕事です。
 こぼした側は恐縮し、すぐに汚れをふき取りたいと思っています。ところが、自分の家なら、濡れ布きんを持ってきて拭きとることができます。機内では、それが勝手にできません。頼りはスチュワーデスです。
 こぼされた側も、旅先でも着る予定の服を汚されて困っています。なんとか汚れが落ちないかなと思っています。
 困っているお客様の心情をくみ取って、何とか汚れを落とそうと努力しているスチュワーデスがいる反面、お客様同士のことだからと、適当に対応しているスチュワーデスもいます。彼女は、お客様から見れば、冷たいスチュワーデスなのです。


ミールチョイス

 搭載されている和食・洋食の数とお客様の希望とが一致しないときがあります。食事オーダーをとるときプレッシャーがかかります。ときに気が重いこともあります。
 どのFLTでも、100%お客様の希望に添うようにするには、旅客数の和食と洋食を搭載しなければなりません。それをするには、莫大な費用がかかります。運賃を値上げしなければやっていけません。そのため、100%満足させるだけExtraは搭載されていません。どの程度、旅客の希望に添うよう計画されているかというと、それはだいたい80%です。あとの20%を補完するのが客室乗務員の役割です。あらゆるテクニックをつかって、その日のチョイスをうまくこなすのがプロの客室乗務員です。また、チョイスがうまくいかなかったときに、謝るのもサービスのうちです。
 自分はお客様に謝るのがイヤだから、後輩が担当するミールカートから、足りなくなったアントレを持って行ってしまう先輩C/Aを見かけます。このような人をベテランとは呼びません。ただの古参C/Aです。


テクニック その@ 「心理学の応用」

 今日は洋食がたりなくなりそうだ。この路線ではいつも和食が足りなくなる。サービス前に、皆さんも何らかの予測をすると思います。オーダーをとっている内に、予測と違うことも起きます。
 このテクニックで、すべて解決するわけではありませんが知っておいてください。それは、心理学の応用です。人間は、先にインプットされた言葉に左右されることがあります。和食が足りなくなりそうな場合は、お客様に
 「今日は、洋食と和食がございます。いかがですか」
と案内します。まだ決めていないお客様や、食事にあまりこだわらないお客様は、先にインプットされた名前を選ぶ傾向にあります。


テクニック そのA

 一部のEntreeがAll Outになってしまうことがあります。FRクラスで、あるSUは、和食がAll Outになり、
ちょっとあせっていました。お客様に、
 「もう和食がありません」
と言えずにいました。もしかしたら、和食以外のオーダーがあるかもしれないと勝手に予測して、お客様のところに行き、
 「お客様、お食事は、和食と洋食どちらにいたしましょうか」
と言ってしまいました。くだんのお客様は、期待に反して、「和食」を希望しました。そのSUはやむを得ず、
 「お客様、実は・・・」
と切り出しました。もうダメです。お客様はムクれてしまいました。当然です、お客様に期待を持たせ、その期待を裏切ってしまっては・・・。あるEntreeが品切れになっても、動揺しないください。そのようなことも、ときには発生します。
 大切なことは、ウソをつかないことです。腹をくくってください。そして、お客様のところに行きます。そして、すぐに同調の位置についてください。姿勢を低くして、メニューを示しながら、
 「お客様、(少し間をあけ) 実は・・・」
と切り出します。勘のよいお客様なら、
 「なんだ、今日は、和食がないのか・・・」
と言ってくれます。もちろん、和食がないことに対 する不満は残りますが、お客様の不満は和らぎます。


DH・EF・出張者の活用

 機内には、私用・公用で社員が搭乗していることがあります。社員だからサービ スは最後でよいなどとケチなことは言わないで、他のお客様と同様に扱うとよいです。
 オーダーの時、和食(洋食)が足りなくなりそうだ。そうすると、社員のオーダーを後回しにするC/Aがいます。
 このやり方は、意外と不評を買うことがあります。隣にいる一般のお客様からみれば、どうしてオーダーをとらないのだろうと奇異に見えます。EFやDHも落ち着かなくなります。
 通常どおり、一通りオーダーをとって見ます。そして、一方の食事が足りなくなったとき、協力してもらうようにします。


お金を扱う

 機内販売時には、お客様と現金やクレジットカードのやりとりを行います。お金に関係するトラブルも多々発生しています。たとえば、
 「5000円を預かって、つり銭を持って行ったら10000円渡したはずだ」
 「つり銭をもらっていない」
 「カードを返却してもらっていない」
などがあります。金額のトラブルを防止するには、

―現金等を預かるときは、 かならず声に出して、お客様と確認するー

    

ことです。お客様も錯覚することがあります。声に出す意味は、視覚的に確認するだけでなく。聴覚的にも確認することになり、より確実になるからです。また、周りのお客様にも聞こえますので、後で、トラブルになったときに助けてもらえます。

 
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